栽培地と栽培方法が異なる国産および外国産の水稲数品種を炊飯し、飯粒を液体窒素で急速凍結した後真空凍結乾燥機で乾燥して観察試料とした。試料の表面および割断面に金をコ-ティングした後走査電子顕微鏡で観察して次の結果を得た。 1.炊飯米の構造は食味と密接に関係し、良食味米では飯粒の表面および内部ともに多量の微細な空隙に富む立体的な網目状構造の発達が認められたが、食味の低下に伴って網目状構造が減少し構造が緻密化した。飯粒表面における網目状構造の発達程度と粘りの多少との間にはとくに密接な関係が認められ、ほとんど粘りのないインド型の米では網目状構造が全く発達しなかった。 2.炊飯米の食味を低下させるタンパクは主として2種類の顆粒状態で精白米の表層部に存在した。タンパク顆粒の含有量は食味の良い品種で少なく、低食味品種では多かった。タンパク顆粒は炊飯に伴って膨潤するもののほとんど分解せず、網目状構造の発達を抑制している可能性が示唆された。 3.飯粒中には炊飯過程で分解しなかったアミロプラスト包膜および胚乳細胞壁の残存も認められ、残存量は良食味米で少なく、低食味米では多かった。これら胚乳の膜系も網目状構造の発達を抑制している可能性が示唆された。 4.市販の精白米の表面は、精白過程で表面のデンプンが糊化して形成された厚さ約10μmのプレ-トによってほぼ全面が覆われていた。
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