1.テッポウユリを中心に、CMV感染が認められた球根とひも状ウィルスに感染している球根を用いて、りん片切片の培養を行い、子球形成能力と子球のウィルス除去率の比較を行った結果、培養に用いた母球根がウィルスに感染しているものは、形成された子球の出葉がやや遅れる傾向が認められた。 2.抗植物ウィルス剤DHTを添加した培地では、テッポウユリの一次子球の78%がCMV除去され、76%の子球にはひも状ウィルスが認められなかった。 3.一次子球を再培養して得られた二次子球ではウィルスの除去率が高まり、DHTの添加は無添加区に比較してウィルス除去率が高まった。 4.培養温度や光条件を変えて培養しても、ウィルス除去に対して明確な効果は認められなかった。 5.テッポウユリでは、茎切片からも培養によって効率的に子球を獲得することができ、りん片切片と同様に、ウィルス除去も可能であった。 6.りん片における子球形成の経過を形態学的に観察するために、培養後5日おきにFAAで固定し、この固定材料を常法によりパラフィン連続切片を作成して染色後検鏡した結果、テッポウユリではNAAとBA添加培地において、多数の生長点が分化して多数のりん片が連続的に形成されることが認められた。 7.組織培養を行わずにポリエチレン袋を用いて球根切片を培養する簡易培養法で得られた子球についても、アマリリスやテッポウユリにおいて、形成された子球にCMVの存在を示す反応が認められないものがみられ、この方法でもウィルス除去できる可能性が認められた。 8.種類の比較では、アマリリスやテッポウユリのようにこれらの方法で除去率の高まるものと、ニホンスイセンのように効果のないものもあった。
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