研究概要 |
本研究は,細胞キメラ利用による栄養繁殖性ネギ類,特にワケギの育種の可能性について検討したものである. 1.仁の数による第2起源層(L_2)の倍数性検定法.葉肉細胞の仁の数によるワケギのL_2の倍数性検定法を検討した.2倍体の孔辺細胞,1cm部の根部細胞及び葉肉細胞は,ほとんどが仁1個のみを有していた.一方,4倍体の孔辺細胞,根部細胞及び葉肉細胞では,仁2個を有する細胞の割合が,それぞれ約80%,44%及び66%であった.さらに,仁の数のよって検定したネギの細胞キメラ(4‐2‐2,2‐4‐4)のL_2の倍数性は,花粉粒サイズで判定したL_2の倍数性と完全に一致した. 2.細胞キメラワケギの生育特性.2倍体,4倍体,4‐2‐2及び2‐4‐4を,自然短日,13時間,14時間日長下で栽培し,生育特性を比較した.4‐2‐2の分げつ数及び葉数は最も多く,草丈は4倍体及び2‐4‐4に次いで高かった.さらに,4‐2‐2の球肥大は2倍体より早まった. 3.細胞キメラワケギの増殖とキメラ性の安定性.In vivo条件下で増殖したコルヒチン処理当代のキメラ植物のキメラ性は変化した.しかし,3年生の4‐2‐2,2‐4‐4のキメラ性は変化しなかった.In vitroで3年生の4‐2‐2,2‐4‐4を増殖すると,0.125ppm BA以下でキメラ性の変化はなかった.しかし,0.25ppm BA以上のキメラ性は変化した.さらに0.5ppm BA+0.1〜1ppm NAAで,キメラ性は著しく変化した. 4.乾物生産特性.2倍体,4倍体,4‐2‐2,2‐4‐4の乾物生産特性を調査した.全乾物量は4‐2‐2で最も高かった.N AR,R GR,CGRは調査日によって変動したが,2月22日〜2月27日間に4‐2‐2において最も高い値を示した.L AI,L AR,LWRも4‐2‐2において,いずれの調査日でも高い値を示した.したがって,4‐2‐2は冬・春季において,最も高い乾物生産性を示した.キメラ植物の光合成特性については,調査中である.
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