研究概要 |
昆虫の中腸は、消化・吸収のみならず代謝や生体防御の場であってその作用機構は複雑な神経・内分泌的制御を受けているに違いない。しかし、その具体的なメカニズムについてはほとんど不明である。我々は1)中腸内のモノアミンの存在様式と生理作用を明らかにしようとした。免疫組織化学でセロトニンとノルアドレナリンの存在を明らかにしたが、これは円柱細胞でもペプチドの傍分泌を行なうパラニュ-ロン細胞でもなく現在その細胞型を検索中である。2)中腸は飢餓や絶食状態で大きく変化するが、それに伴うモノアミン量の変動を調べたところ,Nーアセチルセロトニンが増加し、ド-パミン・トリプトファン・セロトニンが減少することが分かった。これらのモノアミンの生理作用を現在調査中である。3)これらのアミンの代謝酵素の一つであるNーアセチル転移酵素(セロトニンをNーアセチルセロトニンにする。)を、中腸1200個体から精製したところ脳におけるNーアセチル転移酵素と比較すると、脳型の他に2つの分画に活性が現われた。これらについては、現在さらなる精製を進めている。4)ゴキブリ中腸に最も多いパラニュ-ロン細胞は、Pancreatic polypeptide(PP)含有細胞であると思われるが、その次に多い細胞は、オピオイドペプチド含有細胞であり、現在これらを単離・精製中である。免疫組織化学的には、ーエンドルフィンがパラニュ-ロン細胞に,Metーエンケファリンを再生細胞郡に見つけらた。5)検索中の物質の生理作用を探るためにa)マグヌス法による平滑筋収縮測定と、b)Mitsuhashi(1969)のCSMー2F培養液による器官培養系を開発中である。
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