難溶性のリン酸アルミニウム粉末を唯一のリン酸源として、正常に生育できるニンジン培養細胞の選抜株に、カナマイシン耐性・35Sプロモ-タ-・βーグルクロニダ-ゼ(GUS)から構成されるキメラ遺伝子の導入を検討した。導入法として、1)生物学的方法と2)物理学的なエレクトロポレ-ション法を検討したが、2)に際しては細胞融合装置を転用したため良い結果が得られなかったので、ここでは1)の結果について報告する。植物材料は、選抜細胞2株(A株、B株:A株の方が粉末を溶解するクエン酸を多量に放出し生育良)と野生株の各々対数増殖期のニンジン細胞を供試した。対象として、形質転換系の確率されているタバコ葉(SR1)を用いた。Agrobacterium tumefaciensは、上記キメラ遺伝子をTーDNA領域に有するバイナリ-ベクタ-プラスミドpBII21を持つLBA4404用いた。培養細胞とバクテリアを3日間共存培養後、クラホラン(0.4mg/ml)を含む液体培地50mlを浸したポリウレタン上で除菌し、その後10ー100μg/mlのカナマイシン(Km)とクラホランを含む寒天培地に移植して、Km耐性コロニ-を得た。形質転換体の確認は、4ーmethyl umbelliferyl glucuronideを基質に用いた蛍光法によるGUS活性を指標とした。対象に用いたタバコ葉片では、多くの報告どうり形質転換体が容易に得られることを、まず確認した。しかし、ニンジン培養細胞3株を供試した場合、通常の方法では形質転換体は得られず、葉片で転換効率が向上すると報告されている以下の検討を行った。(1)ステンレスメッシュで細胞を軽く損傷、(2)プロトプラスト、(3)宿主領域の広いA281との共存、(4)virlence活性化剤であるacetosyringoneの添加、(5)mannitol添加等を検討したが、得られた細胞コロニ-約300個はいずれもGUS活性を示さず遺伝子導入はできなかった。その後、B株を用いて0.3M solbitolを加え、20ー50μg/mlのKmで選抜したところ、Km耐性12コロニ-中5コロニ-にGUS活性が認められ形質転換体が得られた。現在、A株および野生株を用いて、再現生の確認を行っている。
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