研究概要 |
本研究は平成2,3年度にわたるものである。近年,著者はグリコシラ-ゼが本来の作用水解部位であるαーグルコシド結合を持たないDーグルカ-ル,Dーグルコオクトエニト-ルに作用し,水和反応を触媒する新規な作用能力を発見し,グリコシラ-ゼは基質のアノマ-を厳格には選択していないと言う新しい概念を導くに致った。したがって,もしアグリコンが酵素に立体障害をもたらさない程に充分小さければ,本来αー型の基質に作用する酵素はβー型基質にも作用し得るものと仮定し本研究を行った。初年度は各種酵素の精製,基質の合成,反応の解析等を行う計画を立案した。 これまでに得られた結果の概要を述べると,当初の計画通り順調に進み,ミツバチ,Aspergillus niger,テンサイ,コメなどのαーグルコシダ-ゼ,ア-モンドβーグルコシダ-ゼ,Paecilomyces variotiグルコアミラ-ゼをそれぞれ単離・精製した。特に,前二者は速度論的研究も行い,関係雑誌に投稿した。本研究の基質であるαー,βーグルコシルフルオライドは純度良く合成した。これらグリコシラ-ゼと基質を用いて,本来αー結合に作用するαーグルコシダ-ゼとグルコアミラ-ゼはいずれの起源の酵素もβーグルコシルフルオライドに作用することを見出した。一方,βー型基質にのみ作用するとされるβーグルコシダ-ゼはαーグルコシルフルオライドに作用することを確認した。これらの反応はF^ーの遊離とNMRによって確かめた。したがって,グリコシラ-ゼは従来から考えられていたように基質のアノマ-型を厳格に読みとるものではなく,基質認識はかなりのフレキシビリティがあるものと考えられる。次年度においては,これらの反応が通常の基質の水解部位と同じ所で行われるのか否かを速度論的方法を用いて調べる計画である。
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