| 研究概要 |
1.昨年度に引続き、不完全菌Fusarium oxysporumの脱窒系成分の単離、精製を試みた。亜硝酸塩から亜酸化窒素(N_2O)を生じる活性の成分として、すでに単離されているチトクロムPー450(Pー450dNIR)以外に、Cタイプのヘムを含むチトクロム(Cー553)を単離した。NADHーフェナジンメトサルフェ-ト(PMS)存在下、この2種のチトクロムの混合により上記活性が再現された。さらにこの反応が2段階より成り、チトクロムCー553が前半の一酸化窒素(NO)を生じる亜硝酸塩還元酵素、Pー450dNIRがNOからN_2Oを生じる後半の一酸化窒素還元酵素であることが明らかとなった。ここにPー450の画期的機能が示され、いくつもの興味がある課題が提供された。その中でも、これら酵素への生理的電子供与体の解明が急がれる。
2.上記F.oxysporum以外の脱窒真菌の検索を行ない、予想外に多くのカビが脱窒活性を示すことを見出した。多くの場合、亜硝酸塩からN_2Oまでの脱窒であったが、中には硝酸塩からN_2Oを生じたり、亜硝酸塩からN_2を生じるものもいた。Fusarium solani,Cylindrocarpon tonkinenseなどは亜硝酸塩からNO.N_2O.N_2を生じた。安定同位体である重窒素( N ^<15>)を用いて調べると、N_2OおよびNO分子中の窒素は全て亜硝酸塩由来であるが、N _2では通常の窒素( N ^<14>)と N^<15>が1対1で結合したものであった。すなわちN_2の窒素原子のうち、一方は亜硝酸塩以外の窒素化合物に由来することが判明した。
以上、F.oxysporum脱窒系の主要部分を分子レベルで解明し、Pー450dNIRの画期的機能を明らかにした。また脱窒能を有する真核微生物が予想外に広く分布することを示唆した。さらに真菌に特徴的な脱窒反応として、共脱窒とも言うべき現象を見出した。
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