研究概要 |
(1)PEG資化菌の再同定:PEG400から20,000資化菌を化学分類学的性状や、DNA/DNA相同性などの手法で再同定した。PEG4000以上の資化菌がすべてSphingomonas属であることが明らかになり、いずれも新種のS.macrogoltabidus(PEG4,000資化菌)、S.terae(PEG20,000資化共生菌)と命名した。 (2)Sphingomonas macrogoltabidus No.203のPEG脱水素酵素遺伝子のPCRによる増幅:前年度に増幅されたDNA断片(pegAA)については、その塩基配列を決定した結果、全長289bpであり、両端にはそれぞれプライマーの配列が確認された。また、前年度に合成したPCRプライマーを用いてさらに検討したところ、PQQ結合部位から上流側約500bpの断片が増幅された。このpegAB断片についても塩基配列を一部読みとったが、相当するアミノ酸配列とは一致しなかった。 (3)pUC119およびCharomid9-36によるジーンライブラリーの作成とコロニーハイブリダイゼーション:本菌の染色体DNAのSalI消化断片を、pUC119またはCharomid9-36に挿入し、大腸菌JM109においてジーンライブラリーを作成した。(1)で得られたpeaAA断片をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーションを行ったが、どちらのライブラリーについても陽性のクローンは得られなかった。 (4)EMBL3によるジーンライブラリーの作成とプラークハイブリダイゼーション:本菌の染色体DNAのMboI消化断片を、EMBL3に挿入し、大腸菌ER1647においてジーンライブラリーを作成した。PCRプライマーとして合成したオリゴヌクレオチド2種を新たにプローブとしてプラークハイブリダイゼーションを行ったが、陽性のクローンは得られなかった。 (5)PEGの細菌外膜透過性と分解能:PEG資化菌では一般に、PEG培地で分解酵素が誘導され、外膜にポーリンが形成されることから、ポーリンを含む外膜構造がPEG分子の透過性に関与していることがうかがえたが、S.macrogoltabidus No.203では、例外的にPEGによる誘導効果が認められなかった。本菌は遺伝子に何らかの変異が生じて、酵素の誘導機構および細胞膜構造が変化したものと推測された。
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