食品に極微量混在するリン脂質の高度不飽和油脂(魚油、シソ油など)および生体内脂質に対する過酸化防止作用とそのメカニズムの解明を研究目的とし、研究成果を実際の食用油脂加工に応用するとともに、食品リン脂質の生体抗酸化機能の解明に関する研究を行った。 平成2年度は、高度不飽和油脂(微量のαートコフェロ-ルを含む)に各種リン脂質を添加した時の過酸化反応の調査(in vitro実験)と実験動物の組織脂質過酸化および寿命に与える摂取油脂の影響(in vivo実験)を調べた。 天然油脂とくにシソ油や魚油などの高度不飽和油脂に飽和ないし不飽和脂肪酸を含有するホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノ-ルアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)などのリン脂質を極微量添加し、自動酸化速度を比較し、酸化劣化を防止するための至適なリン脂質種および添加割合を明らかにしたが、リン脂質の中でPEとPSが特に効果的な抗酸化能を発揮することがわかった。 また、老化ラットの肝臓や脳では、若いラットに比べてリン脂質の減少と脂質ヒドロペルオキシドの蓄積が顕著であるが、この脂質過酸化は摂取油脂の影響を大きく受けること、また、加令に伴い細胞膜のリン脂質脱落のあることを新たに見出した。 一方、肝ガンモデル動物では、発ガンの誘導期で肝リン脂質の過酸化とリン脂質自体の減少が顕著であることが見出され、食餌的に膜脂質組成・脂肪酸組成を正常化することにより脂質過酸化が防止できるかを検討中である。
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