本研究は、自然界の芳香族化合物の主要部分を構成しているリグニンの、分解代謝過程に関与する土壌微生物の機能を遺伝子として単離し、その遺伝子機能を工業的化学反応プロセスとして利用し、従来の化学的手法では到達できない特異性の高い生物機能を利用した新しい変換システムの構築を目指したものである。 本年度は、従来の化学的手法では困難なリグニンの芳香環開裂を速やかに行なう事が出来る環開裂酵素、プロトカテク酸4、5ージオキシゲナ-ゼの遺伝子及び、本酵素の開裂反応によって生成したムコン酸セミアルデヒド化合物の変換反応に関与する遺伝子を新たに単離して、その構造と機能について詳細に解析した。すでに土壌微生物の全DNAより、プロトカテク酸4、5ージオキシゲナ-ゼ遺伝子が存在するDNA断片として単離されている、10。5KbpーDNA断片上の遺伝子機能を解析した。その結果プロトカテク酸4、5ージオキシゲナ-ゼ遺伝子は、XbaIーXhoI断片上に存在し、その塩基配列を決定した。またこの遺伝子の下流域に、ムコン酸セミアルデヒドを2ーピロンー4、6ージカルボン酸に変換する酵素をコ-ドする遺伝子機能を新たに見いだした。現在この遺伝子機能をさらに詳細に解析している。
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