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1991 年度 実績報告書

ヤドリギの培養細胞を用いた樹木細胞間の相互認識機構

研究課題

研究課題/領域番号 02806034
研究機関京都大学

研究代表者

東 順一  京都大学, 農学部, 助教授 (80115782)

研究分担者 岡本 圭造  京都大学, 農学部, 教授 (50026506)
キーワードヤドリギ / 培養細胞 / 相互認識 / 樹木細胞 / 認識機構
研究概要

ヤドリギとその宿主細胞との相互作用を解明する目的で、両者の培養系への導入を試みた。その結果、ヤドリギの仮根と宿主であるエノキは共にベンジルアデニン0.1ppm、ナフタレン酢酸1.0ppmを含み、イオン強度を半分にしたMurashigeーSkoog(MS)改変培地を用い、28℃、12時間の明暗周期、光度が約2,500luxの条件下で培養が可能であることがわかった。そこで、この条件下でヤドリギの種子を無菌的にエノキカルスの上に移植し、in vitro系でのヤドリギの根端とエノキカルスとの接触を試みたところ、両者は共に接触阻害を起こさずに成長し続け、奇生を無菌的に成立させることに成功した。以上の結果から、上記の系を用いることにより異種植物細胞相互作用の分子レベルでの研究の基礎が整えられた。
次に、ヤドリギが宿主の植物に奇生する初期段階には、種子が宿主植物の表面に長期間接着することが不可欠であるので、ヤドリギ果実中に含まれるこの接着物質の性質の解明を試みた。その結果、ヤドリギの果実の中には極めて粘度の高い高分子化合物が存在することがわかった。この粘質物の単離・精製にはじめて成功し、ビスカンと命名した。ビスカンは化学的にはセルロ-ス(66%)とヘミセルロ-ス(34%)の複合体であり、その凍結乾燥前後のX線回折図を比較したところ、凍結乾燥によりわずかに非晶性がくずれるが、いずれも明瞭な回折を示さず、全体として非晶の状態であることがわかった。また、ビスカンの形態を原子力顕微鏡により観察した結果、ビスカンは明らかに繊維状を呈し、その太さは1.7nmであることがわかった。さらに、固体高分解能NMRスペクトルを測定したしころ、ビスカンは非晶セルロ-スとヘミセルロ-スとからなることが確かめられた。以上のことから、ヤドリギはセルロ-スとヘミセルロ-スからなる複合体を天然の接着剤として利用することにより、宿主植物への奇生を開始すると結論された。

  • 研究成果

    (7件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (7件)

  • [文献書誌] Mitsue,Fukui: "Induction of Callus from Mistletoe and Interaction with its Host Cells" Bulletin of Kyoto University Forest. 62. 261-269 (1990)

  • [文献書誌] Tadahisa,Iwata: "Conformational Analysis of Regioーselectively Substitued Cellulose Esters" Senーi Gakkaishi. 47. 379-383 (1991)

  • [文献書誌] Naoto,Shibuya: "6ーDeoxyーDtalan and 6ーdeoxyーLーtalan Novel SerotypeーSpecific Polysaccharide Antigens from Actinobacillus actinomysetemcomitans" Journal of Biological Chamistry. 266. 16318-16323 (1991)

  • [文献書誌] Yasuyo,Fujii: "Distribution of Esterified Phenolic Acids in Cell Walls of Immature Bamboo" Bulletin of Kyoto University Forest. 63. 272-282 (1991)

  • [文献書誌] Junーichi Azuma: "Identification of the ^1HーNMR Spectra of Complex Oligosaccharides with Artificial Neural Networks" Trends In Glycoscience and Glycotechnology. 3. 429-432 (1991)

  • [文献書誌] Tadahisa,Iwata: "Preparation and N.M.R. Assignments of Cellulose Mixed Esters Regioselectively Substituted by Acetyl and Propanoyl Groups" Carbohydrate Research. 224. 277-283 (1992)

  • [文献書誌] 東 順一: "バイオメディカル:膜(木材の化学と利用技術II、四機能性セルロ-ス)" 日本木材学会, 118 (1991)

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公開日: 1993-03-16   更新日: 2016-04-21  

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