〔中脳遊泳運動誘発域〕人為的に遊泳運動を誘起する方法を検討した。ネンブタ-ル麻酔したコイの中脳最後部の正中部脳室直下に電気刺激を加えると、正常と思われる遊泳運動が起きた。このときの刺激強度の閾値は2〜5μAであり、左右の血合筋からは交互の規則正しい筋電図叢放電が記録された。 〔感覚刺激による遊泳運動の誘起〕上記実験中にネンブタ-ル麻酔した魚が自発的に遊泳することに着目し、ネンブタ-ルの至適量と刺激法を検討した。この結果、魚にネンブタ-ルを0.2mg/100gBW注射すると、魚は約2時間催眠状態となること、その状態の魚の尾鰭や尾柄部に軽い接触刺激を加えるとゆっくりした遊泳運動が10〜数10秒間誘起されることが分かった。運動ニュ-ロン活動の脊髄腹根からの細胞外記録も可能であった。 〔脊髄運動ニュ-ロン〕運動ニュ-ロンを脊髄腹根からHRPで逆行性に標識した。運動ニュ-ロンは血合筋支配細胞(rMN)も普通筋支配細胞(wMN)も、注入部を後縁とする脊髄セグメントの全域に分布した。rMNの大きさのモ-ドは30ー40μmで、中心管より腹側に分布した。wMNの大きさのモ-ドは20ー40μmであるが、これ以外に60ー80μmの大型ニュ-ロンもある。wMNは中心管周辺の脊髄前角に分布した。 〔細胞内記録〕どのfictive Swimming標本においても、細胞内に微小電極を刺入することができなかった。 〔抑制性伝達物質の免疫組織化学〕抑制性神経伝達物質であるGABAおよびグリシンに対する特異抗体を用い、コイ脊髄切片の免疫染色を行った。両抗体により後角の小型細胞と中央部から前角の全域に分布する大小の細胞が染色された。抗GABA抗体では中心管上衣細胞の一部が染色された。前角にある運動ニュ-ロンを含む大部分の細胞がグリシン免疫陽性のシナプスを被っていた。
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