球を転動させ車体を支持推進する構想の検証実験を、本補助費の交付を受けた年度を含め3年間にわたり行ってきた。その構想は、3本の駆動ロ-ラを大きな球の上部同緯度に互いに120°に配置し接触させ、摩擦伝動により球を転動させ、かつ車体を支持するというものである。「かじ取り装置から“積分要素"をなくすとすればどのような機構が考えられるか」という命題に対するひとつの解として本課題は位置付けられよう。 1.ベルトコンベア用のギヤ-ド・モ-タ内蔵ロ-ラ(周速度5m/s、直径28mm)3本とバスケット・ボ-ルを用いて駆動ユニットを製作し、同ユニットを揺動腕に取り付け定置とし、ピンポン球を多数敷詰めた上に置いたボ-ルを乗せ板を動かすようにして、転動性を調べた。板の上にカ-ボン紙を張り付けた上に白紙を敷き、ボ-ルの圧痕を付け軌跡を記録した。 2.軌跡を、原点を通る直線で回帰し、その傾きでもって目標方向からのずれとし、回帰直線から軌跡までの距離の標準偏差でもって蛇行の大きさとして、直進性を評価した。 3.結果、1)転動方向とロ-ラの位置関係により、転動に方向性がある。2)ロ-ラの緯度は蛇行の大きさに影響せず緯度が高くなるほど目標方向からのずれが大きくなる。3)転動方向と斜めになるロ-ラの回転速度は、直角になるロ-ラのそれより高く設定され、緯度が45°のとき、その比は1.35である。この比のところで蛇行もっとも小さくなる。 4.駆動ユニット3基からなる走行装置を製作し、室内の床、草の生えている不整地及びロ-タリ耕後約1か月の畑地において、走行を確認した。 5.今後、走行装置による検証実験を2年計画で進めていく予定である。
|