研究概要 |
本年度の研究は予定された計画(3)を除きほぼ予定通り遂行した。牛、豚胎児の骨格筋由来筋芽細胞の調整法と培養法がほぼ確立し、ミオチュ-ブ形成を高率に引き起こす因子の検討がなされた。細胞調整法は数種の酵素消化法が試みられ、その結果、ヒアルロニダ-ゼ、コラゲナ-ゼおよびディスパ-ゼを組合せる方法が最適であることが判明した。筋芽細胞の純粋培養のために、初代培養において、筋芽細胞の濃縮および選択が行われた。筋芽細胞を含む細胞浮遊液をコラ-ゲン膜を作成した培養ボルトで短時間培養し、強い付着性をもつ繊維芽細胞を除き、次に、非付着細胞を一晩培養し、ディスパ-ゼ(2000u/ml)で処理することにより細胞を回収した。この細胞画分には筋芽細胞が高率に存在し、その収量は他の方法に比べ著しく高かった。筋芽細胞の同定は各培養時にミオシン、クレアチンホスホキナ-ゼ筋肉型アイソザイムの抗体を用いて、免疫組織化学的に行った。上述の様にして得られた牛、豚の筋芽細胞画分を10%FCSと1.0ー2.0%のニワトリ胚(CEE)および豚胎児抽出物(PEE)を含むダルベッコウ培地とMー199培地を4:1の割合で混合した培地で培養すると、筋芽細胞は分化しミオチュ-ブを形成した。ミオチュ-ブ形成率は牛筋芽細胞のほうが豚筋芽細胞より高く、また新生児より調製した筋芽細胞でも高率にミオチュ-ブが形成されることが判明した。無血清倍地では筋芽細胞はわずかに増殖するが、ミオチュ-ブには分化することがなかった。しかしながら、PEE,CEEが2.5%添加された時、筋芽細胞の増殖は増加し、ミオチュ-ブの形成が認められた。次に、ミオチュ-ブ形成を促進する因子の検討がトランスフェリン、インシュリン、インシュリン様成長因子、繊維芽細胞長成因子の種々の濃度で行われた。いずれの場合でも、単独使用では良い結果が得られなかった。今後、これら因子の組み合わせによる検討、またはPEE,CEEからの有効成分の抽出、分離が必要である。現在、ミオチュ-ブ形成の機序に関する研究が行われており、多少の遅れはあるが、当初の実施計画に基づいて進行している。
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