食糧としての家畜(牛・豚)骨格筋細胞の応用に関する基礎研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02806049
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 山口 高弘 東北大学, 農学部, 助手 (20111297)
• キーワード: 家畜骨格筋細胞 / ミオブラスト / ミオチュ-ブ / 筋形成 / 分化因子

研究概要

昨年度、ミオチュ-ブ形成が豚ミオブラストより牛ミオブラストにおいて高率に生ずること、またミオブラスト形成はトランスフェリン(Tf)、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)によって単独では促進されないこと明らかにした。今年度、これらの因子を組合せ、さらにミオブラストの増殖、分化を促進する豚胎児抽出物(SFE)の牛ミオブラストからのミオチュ-ブ形成に対する作用を詳細に検討した。Tf、インスリン、IGF、IFGの組合せはミオチュ-ブ形成の促進には有効でなかった。SFEはミオチュ-ブ形成を良く促進することが判明した。牛ミオチュ-ブは成形単層になる直前に短時間の間に起こり、ミオブラストが数多く存在すると筋原線維が発達した成熟線維(筋細胞)が確認された。この一連の筋形成にSFEは不可欠であった。そこで、SFEに含まれる牛、豚筋芽細胞の増殖、分化因子(Skeletal muscle myoblast diffeーrentiating factor:SMMーDF)の作用と機序を解明することを試みた。実験は非筋細胞を含まない豚ミオブラストよりクロ-ニングして作成した筋芽細胞株sMcー1を使用して行った。SMMーDF活性は豚胎児の皮膚、肺、骨格筋、腎、脳の抽出物にすべて存在し、組織持異的に産生されるものではないことが判明した。次に、SFEからSMMーDFの限外濾過法による分画を試みた。筋原細胞の増殖活性は分子量3kd以下、30ー100kd以上の3分画に認められ、ミオブラストの分化誘導活性は30ー100kdで最も著しいことが判明した。このことはSMMーDF活性は分子量30ー100kd分画に存在することを示す。SMMーDFは血清の存在化でミオブラストの分化誘導を促進し、牛筋原細胞培養系に加えることにより、ミオブラストーミオチュ-ブー筋細胞の一連の筋形成を誘導した。一方、今年度の課題の一つである筋形成の大量培養法を自動培養装置でアルギン酸ビ-ズ法とセルロ-ス担体に1型コラ-ゲンを結合させたCellsnowーCX法で種々検討した。これらの培養系ではミオブラストは3的に培養され、増殖には間題はなかったがミオチュ-ブ数が著しく低下し、筋細胞形成に至らなかった。今後ミオブラストの分化に適した3次元的培養の可能な担体の開発が必要とされる。
本研究を通して、牛、豚骨格筋について、ミオブラストの性状、培養条件さらにミオブラストーミオチュイブー筋細胞分化とその関与因子が明らかにされた。大量に筋形成を誘導する培養系に関しては今後さらに技術開発が可能であるが当初の目的はほぼ達成された。

研究成果

• [文献書誌] T.Yamaguchi,H.Kitazawa,T.Hoshino: "Longーterm Culture of Swine Myogenic cells." Anim.Sci.Technol.(Jpn.). 62. 620-627 (1991)
• [文献書誌] T.Yamaguchi,T.Hoshino: "Cytochemical Characteristics of Clonal Myogenic Cells Derived from Swine Skeletal Muscle." Anim.Sci.Technol.(Jpn.). 63. 8-15 (1992)
• [文献書誌] T.Yamaguchi,H.Kitazawa: "Regulation of Swine Myogenic Cell Differentiation before the Onset of Fusion." Anim.Sci.Technol.(Jpn.). 63. (1992)
• [文献書誌] T.Yamaguchi,H.Kitazawa,S.Ohshida,I.Shioya,A.Suzuki.: "Characterization and Modulation of Swine Myogenic Cells in vitro." Cytotechnology.
• [文献書誌] T.Yamaguchi,H.Kitazawa,S.Ohshida,I.Shioya,A.Suzuki.: "Large Scale Induction of Bovine Myogenic Cells." Cytotechnology.