本研究では、牛末梢血中に発現しているT細胞抗原レセプタ-(TCR)遺伝子の分離と該遺伝子の構造解析を行った。本年度は特に末梢血中のヘルパ-T細胞及び細胞障害性T細胞に多く発現しているTCRα鎖とβ鎖について検討した。 cDNAライブラリ-は、牛末梢血リンパ球より分離したmRNAを基に作製し、6X10^4コと2X10^6コのλgt10cDNAライブラリ-を作製した。マウスTCRα鎖とβ鎖定常域をプロ-ブに用い牛TCR遺伝子の分離を行い以下の成績を得た。 1.牛TCRα鎖遺伝子の分離と構造解析 (1)陽性30クロ-ン中20クロ-ンが再構成した機能的なメッセ-ジであり、中でも7クロ-ンはVーJーCの各セグメントであった。残り10クロ-ンは、不完全な再構成であったりC領域のみであった。(2)牛TCRα鎖のC領域は140個のアミノ酸からなり、3ヶ所のシステイン残基と4ヶ所の糖付加部位を有していた。(3)牛TCRα鎖定常域は、ウサギ、マウスに比べヒト(60%)の定常域に高いホモロジ-を示した。 2.牛TCRβ鎖遺伝子の分離と構造解析 (1)陽性38クロ-ンの内22クロ-ンは再構成した機能的なメッセ-ジであり、VーJーDーCの各遺伝子セグメントからなっていた。残り16クロ-ンは不完全なメッセ-ジであった。(2)牛TCRβ鎖の定常域は、マウス(78%)、ウサギ(83%)に比べヒト由来β鎖定常域(83%)に高いホモロジ-を示した。 以上の成績は、Immunogenetics(1990)に2報に分けて公表した。
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