研究概要 |
本年度は牛T細胞抗原レセプタ-(TCR)遺伝子γ鎖とδ鎖の分離と構造解析、さらには牛白血病由来T細胞で発現しているTCR遺伝子の分子構造について解析を行った。牛末梢血リンパ球と胸腺細胞から作成したcDNAライブラリ-(2x10^6個と5x10^5個のプラ-ク数)より牛TDRγ鎖9クロ-ンと牛TCRδ鎖3クロ-ンを分離した。得られたγ鎖9クロ-ンの内4クロ-ンは、遺伝子再構成を示すVーJーC構造を示していたが、残りの5クロ-ンはC領域のみであった。また牛γ鎖C領域は3群(Cγ1,Cγ2,Cγ3)に分類され、222個、211個、194個のアミノ酸残基をコ-ドしていた。特にγ鎖C領域のヒンジ部分に大きな多型性が観察され、5つのアミノ酸配列(TTEPPあるいはTTKPP)の繰り返し構造が存在した。各種動物由来γ鎖C領域との比較では羊由来γ鎖に80%以上のホモロジ-を示した。一方牛TCRδ鎖はVーDーJーC構造を示し、C領域も1種類で155個のアミノ酸をコ-ドしていた。牛δ鎖C領域内にはシステイン残基は3カ所存在し、糖付加部位も2カ所とマウス、ヒト同様良く保存されていた。C領域のアミノ酸配列は、ヒト(62%)およびマウス(64%)に比べ羊(85%)に高いホモロジ-を示した。 牛散発型(T細胞系)白血病(仔牛型、皮膚型、胸腺型)よりヌ-ドマウスを介してT細胞系腫瘍細胞株を樹立し、腫瘍細胞株におけるTCR遺伝子の構造について解析を行った。仔牛型および胸腺型由来腫瘍細胞株はγ鎖とδ鎖を、一方皮膚型はβ鎖とδ鎖を発現していたが、cDNAクロ-ンの塩基配列の結果から、これらのメッセ-ジは機能的なメッセ-ジでないことが明らかとなった。また胸腺型腫瘍株より新しいγ鎖C領域(Cγ4)も分離された。以上の結果より牛γ鎖C領域は、マウス同様4種類存在することが明らかとなった。
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