研究概要 |
1. 高発現量の組み換えハンタウイルス構成蛋白を得るために,カイコバキュロウイルスを発現ベクターとした発現系の確立を試み,エンベロープ蛋白と核蛋白をコードするcDNAをそれぞれ別々にカイコバキュロウイルスのウイルスDNAに組み込むことに成功した.さらに,それぞれの組み換えウイルスが,in virtoの系で蛋白を発現し,それらがいずれも本来のウイルス蛋白と極めて一致した抗原性を保持していることを,単クローン性抗体の反応性から確認した. 2. それらの組み換えウイルスをカイコ虫体に接種して体液(ヘモリンフ)中に組み換え蛋白の発現を確認した.さらに,そのヘモリンフからの組み換え蛋白(組み換え核蛋白)の可溶化が塩基性条件下での6M尿素処理によって可能であることが明らかになった.この可溶化物はカラムクロマトグラフィーによってさらに精製可能であり,今後の応用への可能性が拡大した. 3. 組み換え核蛋白に対する免疫血清および免疫リンパ球をウイルス感染哺乳マウスに受身投与したところ,いずれもマウスを死亡から部分的に防御する免疫活性を有することが明らかになった。抗組み換え核蛋白抗体にはウイルス中和活性がないことから,細胞依存性の防御免疫活性であることが示唆された.さらに,抗核蛋白抗体には抗体依存性の感染増強活性もないことから,ワクチンの構成成分としての可能性も考えられた.
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