研究目的:鶏のmycoplasma gallisepticum(以下MG)及びM.synoviae(MS)による感染症の血清診断法として、現在常用されている急速凝集反応は、非特異反応が多く信頼性に乏しい。また、特異性に富む血珠凝集阻止(HI)反応は、抗原の作成が困難な上市販されておらず、手技も複雑なため、養鶏場のレベルでは常用されていない。そこで、免疫結合(以下IB)反応を応用した簡便な血清診断法を確立し、診断用キットの市販化を促すことを目的として、今回の研究を実施した。 研究材料と方法:市販のセルロ-ス膜2種と、プラスチック製血液検査用プレ-ト(以上単にプレ-ト)を用い、抗原付着法、ブロッキング、洗浄法などの手技を種々検討した。また、MG及びMSを実験感染させたSPF鶏の経時採取血清並びに野外飼育鶏の血清を対象に、IB法とHI法による感染抗体価の比較を実施した。 成績と考察:抗原の担体として、プレ-トが抗原の固着、洗浄、取り扱い操作などの点で、膜片よりも便利であるが、Durapore膜上の発色斑が半永久的に保存できるのに対し、ブレ-ト上に生じた発色斑は、2週間程度で衵色するので、保存には不適当であることが判明した。IB法はHI反応に比べて感度が高く、正常血清も1:20程度まで非特異反応を呈するものがみられた。IB反応で1:40以上を陽性と判定した場合、MGまたはMSを実験感染させた鶏の血中抗体は1週間後から10羽全例に高い値で検出された。これに対し、HI法では、全例が1:10以上の抗体値を呈したのは2週間後であった。野外鶏の血清検査では、HI反応で陰性の例にIB抗体陽性のものが認められたが、この逆は希であった。本法用抗原・試薬のキット化は野外での抗体検査に有用と考えられる。
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