研究概要 |
エストロゲン依存性増殖を示す下垂体腫瘍から分離した4種の樹立細胞株の中でMAT/Sは下垂体の成長ホルモン(GH)細胞と似た性質を示す。この細胞は分裂時にもGH陽性の分泌果粒を持つ他,BrdUの取り込みとBrdUに対する免疫細胞化学から同定される増殖期の細胞は全てGH陽性であることからMAT/SはGH細胞として増殖している細胞であることが明らかになった。この細胞は増殖期にはプロラクチン(PRL)細胞は存在しない。また培養液や細胞からラジオイムノアッセ-(RIA)で検出されるPRLは存在しない。しかし,増殖が止まる頃になると僅かにPRL細胞が出現するのでMAT/SはPRL細胞への分化能を有する細胞であることが知れた。このためPRL細胞への分化促進因子を明らかにするために多くの成長因子を作用させた所,インスリンおよびインスリン様成長因子(IGFー1)に顕著な効果かわることが判明した。すなわちインスリンやIGFー1を作用させた後、3〜4日後に多くのPRL細胞が出現する他,培養液,細胞の抽出液にもPRLがRIAやWistern hlottingによって検出された。7日間作用後、出現したPRL細胞を計測した所、約10%の細胞がPRL細胞であった。また,インスリンやIGFー1はMtTIS細胞のGH産生能を著しく抑制する。これらの増殖因子の作用によってMtTIS細胞の中にはGHもPRLも持たない細胞が多く見られるようになる。これらの結果から予想されることはGH細胞としての特徴を持つMtTISはインスリンやIGFー1によってGH産生が抑制されると同時にPRL細胞への転化を促進することを示す。このことは内分泌細胞での細胞転化を示す最初のシステムであると考える。
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