本年度は、研究実施計画に従って骨を中心に研究を行い、次のような結果を得た。 1.放射性カルシウムを投与した動物の骨を用い、塩化アンモニウム溶液による処理で骨がどの程度脱灰されるかしらべた。液体シンチレ-ションカウンティングで測定すると、2週で50ー90%程度の放射性カルシウムが溶出し、試料に対する塩化アンモニウム溶液の量が多いほど脱灰速度は速かった。しかし、どの様な機構で骨が脱灰されるかは不明なので解明が必要である。 2.塩化アンモニウムで処理した骨と処理しない試料を電子顕微鏡で比較すると、塩化アンモニウムによる脱灰後もカルシウムを含む沈澱はよく保存され、沈澱の局在に差異は見られなかった。したがって、脱灰後の試料から得られたカルシウムイオンの局在に関するデ-タは、非脱灰のものと同等に信頼できると考えられる。 3.ピロアンチモン酸法を使い、非脱灰の試料で膜内骨化におけるカルシウムイオンの局在を調べた。骨芽細胞の粗面小胞体や破骨細胞の空胞などにカルシウムの沈澱が多量に観察された。これらの結果は論文として現在印刷中である。 4.軟骨内骨化におけるカルシウムイオンについても検討した。カルシウムイオンはおそらく細胞間を輸送されると推測されたが、その濃度が低いためかピロアンチモン酸法では明確な結果を得ることができなかった。現在用いている方法では、カルシウムイオン検出の感度が十分に鋭敏ではないので、文献にみられる種々のピロアンチモン酸固定法を検討した。しかし、感度を上げれば、カルシウムを含まない非特異的な沈澱も増える傾向があり、特異性を保持しつつ感度を上げるのは困難であった。
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