研究概要 |
平成4年度は、今までの成果を発展させて,次のような進展があった。しかし、歯については、耳石や骨で成功したような新しい選択的脱灰方法を見つけることができなかった。 1.従来のピロアンチモン酸法は、固定が悪く沈澱の局在もあまり正確でないが、ピロアンチモン酸にグルタールアルデヒドを併用すると、固定が改善され沈澱の分布がより正確になることが分かった。 2.塩化アンモニウムで耳石や幼若な骨は脱灰されたが,歯はほとんど脱灰されなかった。歯にも応用できるような選択的脱灰法の開発が待たれる。 3.骨では、骨芽細胞の粗面小胞体、破骨細胞の刷子縁や空胞などにカルシウムの沈澱が多量に観察された。 4.塩化アンモニウムによる脱灰後も沈澱はよく保存され、脱灰前後で沈澱の局在に差異は見られなかった。 5.放射性カルシウムを投与した動物を用い、塩化アンモニウムによる脱灰の程度を液体シンチレーションカウンティングでしらべた。2週間で、骨から50-90%程度の放射性カルシウムが脱灰された。 6.哺乳類の内耳平衡斑では、耳石周囲のカルシウムを含む多量の沈澱がみられる部位に一致してメテナミン銀法で強陽性を示す物質が存在することがわかった。このメテナミン強陽性の物質が結晶の生成に関与している可能性が示唆された。 7.ラット胎仔の内耳耳石が胎生19日頃から急増することが分かった。この時期の内耳をモデルとしてカルシウムイオンの輸送経路の解明を続けている。
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