研究概要 |
造血巣は,哺乳類では一般に卵黄嚢→胎仔肝→骨髄(一部脾臓または胸腺やリンパ節)と移動し,成熟動物の造血は主として骨髄やリンパ組織で終生行わりる。このような造血巣の移動が何故みられるのかについては,発生・分化の基本的な問題でありきわめて難しい問題である。しかし,移動がみられる場合には,必ず移動して行く場所での急速な造血がみられること,そして移動されてしまう場所では,次第次第に造血が消退して行くようであり,その結果造血巣の移動は完結するようである。従って造血巣の移動がなぜ起るのかを解明するうえで,急速な造血を支える“場"の解明が最も重要であろう。つまり循環血中の造血幹細胞を導き入れ,各種血球へと分化させる母体となる組織(stromal cellなど)が何なのかという点である。そこで,胎仔肝の場合造血が爆発的に起る胎令14日〜17日の胎仔肝に存在する造血支持細胞の株化を行うことによって造血の仕組みの解明が行えると考える。株化は遊離胎仔肝細胞を作製し10%Fcsを含むRPMI1640培地にて細胞培養して行った。現在までのところ胎仔肝stromall cell株FF5を得ている。この株は線維芽細胞株であり胎仔肝造血細胞に対する支持細胞能はあまり強くはない。胎仔肝造血系の細胞の増殖を支持する細胞株としては他にFFー1(hepatoma細胞株),FFー4(ラット骨髄細胞培養株)を得てその詳細を検索中である。一方胎仔肝造血系細胞に特異的なモノクロナル抗体(UBー12)についての更なる詳細を検索し,その結果を報告している。すなわち、UBー12陽性細胞はラットの骨髄細胞の約20ー30%を特異的に認めることがわかり、従来報告されているラット造血幹細胞を識別する抗体との比較から、ユニ-クな抗体であることがわかった。これらの解析には設備備品として購入した蛍光顕微鏡用の備品がきわめて役立った。今後UBー12「群を骨髄より分離し,その本体の解明をすすめていく。
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