研究概要 |
造血巣は,哺乳類では一般に卵黄襄→胎仔肝→骨髄と移動する。この造血巣の移動が何故みられるのかを肝仔肝における細胞の動態を解析することによって解明していくことが研究の目的である。その場合に造血幹細胞を流血中より迎え入れて各種血球へと増殖分化させる支持細胞が重要になる。昨年は線維芽細胞様株(FFー5)について解析を加えたが,今年度は,幼若型の肝実質細胞が,赤芽球系などの増殖を支持する細胞ではないかと考え解明してきた。胎仔肝において最も造血が盛んに行われている時期(胎令12ー14日頃)に存在する肝実質細胞は,成熟ラット肝実質細胞にみられる特徴(sinusoidal face,bileーcanalicular face及びcontiguous faceの3つの極性を保持している)を備えておらないか,きわめて不完全にしか備えていないことが,胎仔肝実質細胞の表面抗原の解析から明らかに出来た。そして極性を持たない未分化な肝実質細胞のまわりにおいて造血系細胞は都合よく増殖分化を行うことになると考えられる。おそらく,このような未分化な肝実質細胞からは血球増殖因子が有意に分泌されていることであろう。このような幼若胎仔肝実質細胞に何らかのシグナルが与えられて,成熟ラット肝実質細胞にみられるような機能を備え,極性のはっきりした実質細胞へと成熟することになり,結果的には造血系の未熟な細胞が到来しても,もはや充分に増殖を促す場を提供出来なくなっているように思われる。現在このような造血系細胞の増殖を促す能力を備えた幼若肝実質細胞の株化を進めている。またこのような未熟な実質細胞と相互作用を行うための膜表面抗原が胎仔肝造血系細胞の膜表面に存在すると思われ,既に我々が確立している胎仔肝造血系細胞に特異的なモノクロナル抗体(UBー12)の認める細胞膜抗原の単離精製を進めている。また,モノクロナル抗体(UBー12)の妊娠ラットへの投与によって胎仔肝造血巣への影響を検索中である。
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