研究概要 |
造血巣は,哺乳類では卵黄嚢→胎仔肝→骨髄と移動する。この造血巣の移動が何故みられるのかを胎仔肝における細胞の動態を解析することによって解明していくことが研究の目的である。ラット胎仔肝造血においては胎生の12日〜16日に,流血中の造血幹細胞を引き入れてそれを増殖に向かわしめる最も重要な時期であると考えられた。これまでの研究で,この時期に存在する肝実質細胞(hepatocyt)がそのような造血支持細胞としての能力を発揮しているものと考え,そのような細胞の形態的特徴などを解析してきた。また,昨年までに光顕レベルの免疫組織化学的手法を用いて,胎仔肝実質細胞の表面には,成熟ラット肝実質細胞が発現しているような膜抗原(HAM4,HAM2,HAM8抗原など)をほとんど発現しておらず,ようやく胎生末期で,造血巣が胎仔肝から消失して行く頃になると発現して来ることを示した。そこで今回そのような膜抗原の発現の程度を,更にイムノゴールドを用いた免疫電顕法を用いて解析したところ,HAM4抗原は胎令18日頃に肝実質細胞の表面に確認できた。他の膜抗原についても類似の所見が得られた。これらの結果から胎仔肝において造血巣がみられる重要な因子の1つには成熟肝実質細胞とは異なる未熟な肝実質細胞が存在し,造血系の細胞と密接なかかわりを保持している事があると考えられた。そして造血巣はやがて消失してしまう要因の1つには成熟型の肝実質細胞となって造血巣を支持しないばかりか,肝細胞同志が極性を形成し,毛細胆管の形成などを行う為に,造血系細胞の存在する場所すらも失われてしまうためではないかと考えられた。
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