研究概要 |
これまでの研究成果から,有尾両生類(山椒魚)の肺の神経上皮体は,内分泌細胞,粘液細胞と基底細胞からなる複合体で化学受容体およびホルモンを分泌する機能を兼備し,同時にこの内分泌細胞はコリン作動性神経終末との間にシナプスを形成していることが判明した(Okajima Folia Anat.1985)。また,ほ乳類の新生児では,気管支の分岐部に神経上皮体の存在が知られている。 1.酸素濃度に感受性のある細胞の同定という研究計画を進めるにあたって,まず,正常の山椒魚とマウスの肺神経上皮体と神経終末間のシナプスにおいて,下記物質の局在の有無を検索した。 1)アセチルコリンレセプタ-(AchR)の局在 マウスと山椒魚肺の凍結クリオスタット切片上で,HRPを標識したalphaーbungaroーtoxin(BGT)を反応させた結果,神経上皮体の内分泌細胞に相当する所にAchRの局在が光顕および電顕レベルで証明された。 2)choline acetyltransferase(ChAT)とcholine esterase(AChE)の局在 ChATは免疫組織化学的に,またAChEは組織化学的に検索した結果、神経上皮体の基底側の内分泌細胞に相当する所に,両者の局在が光顕および電顕レベルで同様に証明された。 次に局在が証明されたAchRがその部位で合成されているかどうかを確認するためにAchR mRNAの存在を検索した。 II.AchR alphaーsubunit mRNAの証明 1).プロ-ブの作成とその有効性の確認 マウス筋肉AchR alphaーsubunitの核酸塩基配列の中で,homologyの高い382ー420の塩基配列を選び,核酸合成機でcDNAを合成した。これに紫外線を照射してsenseとantiーsenseのプロ-ブを作成し,これらの有効性をfilter dot blot hibridizationで確認した。 2)筋肉と肺組織上でのin situ hybridization マウスの筋肉と肺組織上で,上記のcDNAプロ-ブを用いてin situ hybridizationを行なって検索した結果,AchR alphaーsubunit mRNAが光顕および電顕レベルでマウスの筋終板のみならず山椒魚の肺神経上皮体にも証明された。(J.Histochem.& Cytochem.)。
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