研究概要 |
生殖細胞の元になる始原生殖細胞(PGC)は、胚発生の早期に生殖巣外に発し、その後、胚体内にできる生殖巣原基に移住していき分化する。ところがPGCのなかには、目的地を外れて異所性に分布していくものがある。その動態、異所での運命を、マウスとニワトリについて追求した。 (1)マウス胚におけるPGCの異所性分布と分化態度を、PGC特異モノクロ-ナル抗体・4C9を用いて免疫組織化学的に検索した。その結果、PGCは單独あるいは集塊を形成して、生殖巣(卵巣・精巣)周囲、副腎および神経節など胚体内の広範囲に亘って存在することを明らかにした。これら異所性PGCに対する4C9抗体の反応性は、雌雄胎仔ともに卵巣内生殖細胞に対する反応態度とほぼ一致しており,このことから、異所性PGCは雌型の生殖細胞に分化していくことが示された。なお、異所性PGCの数は、胎齢の進行とともに減少する傾向にあり、胎齢16日目以降の胎仔では、抗体陽性反応を示す異所性PGCは検出されなかった。(吉永一也)。 (2)ニワトリ胚においては、約10〜20%のPGCが異所性に、主に頭部域に分布していく(既報)。そこで、この異所移住の機構をさらに追求するため、ニワトリPGCをウズラ胚血流中に注入し、その動態を組織レベルで解析した。PGCの同定には、ニワトリ→PAS染色、ウズラ→WFAレクチン組織化学染色によった。その結果、ウズラ胚の早い発生時期(stages 15ー17)に注入されたニワトリPGCは、80〜90%のものが生殖巣領域に現れ、遅い発生時期(st_s.19ー20)に注入されたニワトリPGCは、逆に80〜90%のものが異所性に現れた。このことは、PGCの異所性移住は特別な現象ではなく,またその要因としては、遅い発生時期では生殖巣域のPGCへの誘引作用が減衰し、一方、異所性領域もPGCへの親和性を有する可能性のあることを窺わせた。(中村雅生)。 (3)異所(逸所)でのPGCの分化運命については、更に追究する(藤本十四秋)。
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