本年度は、モルモット近位結腸の粘膜筋板に分布する神経について研究を行った。 1.形態学的研究 酵素組織化学的研究により、間接的ではあるが、アセチルコリンエステラ-ゼを含むコリン作動性神経が粘膜筋板に分布している事が示された。免疫組織化学的研究によりド-パミンーβーハイドロキシラ-ゼ陽性神経線維も存在しており、アドレナリン作動性神経の本組織への分布も示唆された。更に、腸管の粘膜や外筋層に分布する神経に含まれているとされているニュ-ロペプチドに対する抗体を用いた免疫組織化学的研究によって、数種のペプチド含有神経の分布が認められた。特に、タキキニン含有神経は多数分布しており、本組織に対する主要な調節作用を有すると考えられる。 2.生理学的研究 前年度に開発した条片潅流標本を用いて、上記形態学的研究で得られた結果にもとずき、粘膜筋板に分布する神経が含んでいた各種の物質の効果を検討した。その結果最も顕著な収縮増大効果を有していたのはタキキニン類で、とりわけニュ-ロキニンーA(NKーA)であったので、電気刺激による収縮増大現象のうち、アトロピンで遮断されない成分(前年度の報告書参考)は、NKーA含有神経による可能性が高い。従って、モルモット近位結腸の粘膜筋板の収縮増大は、コリン性動性神経とNKーA含有神経の協調によって引き起こされていると考えるのが妥当であろう。 一方、研究の途上で抑制反応の存在を示唆する所見が得られたものの、その機序に関しては解明が進んでおらず、平成4年度以降に研究を行う計画である。
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