1)モルモット近位結腸の良く発達した粘膜筋板を実験材料として、その形態、神経分布および収縮特性について研究した。 2)形態学的には平滑筋細胞の一般的特徴を有していたが、ミトコンドリアが豊富でしかも細胞膜に沿って細胞の辺縁部に局在する傾向があった。 3)粘膜筋板の条片標本を開発し、潅流実験をおこなった。本標本は頻度の高い(18.8+0.29/min)規則的かつ律動的な自発収縮を示した。 4)短時間(10秒間)の経壁的電気刺激により、数秒の潜時のあと急速に立ち上がる相動性(phasic)収縮が起こった。この収縮は10^<ー6>MのTTXで完全に阻止され、また、10^<ー5>Mのアトロピンでも同様に阻止されたので、コリン作動性神経によるものと考えられる。 5)長時間(180秒間)の刺激をした場合の収縮は2相性で、短時間刺激の場合と似たパタ-ンの収縮の後に長く続くピ-クを持つ2番目の収縮がみられた。アトロピン存在下では、はじめの収縮は消失したが、緩やかに立ち上がる次の収縮は刺激時間中持続した。どちらの収縮も10^<ー6>MTTXで完全に阻止された。従って、2相目の収縮は非コリン作動性神経によるものと考えられる。 6)免疫組織化学的研究によって、粘膜筋板には3種のタキキニン含有神経が豊富に分布していることが明かとなった。その他、CCKやNPYなどを含む神経も分布していた。 7)潅流実験で、これらのニュ-ロペプチドのうち、最も低濃度で最も強い効果があったのはタキキニン類のうちのNKーAであり、次いでNKーB、SPの順であった。CCKやNPYは効果がなかった。 8)以上の結果より、粘膜筋板の収縮は、コリン作動性神経とタキキニン含有神経とりわけNKーA含有神経の少なくとも2種の神経によって調節さている可能性が高い。
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