研究概要 |
本研究では,左右の大脳皮質感覚野から,同時に単ーニュ-ロン活動を記録し,その相関係数を計算し,相関図を作製し,これにより,左右の大脳皮質の協調関係を知ることを目的としている。萌芽的研究であるので,技術的に解決すべき点が多かったが(前年度報告書で既述済み),ほぼ解決され,左右の大脳皮質から一対のニュ-ロンを同時記録し,比較的長期にわたり保持することが可能となった。これは一つの大きな収穫である。 今回の科学研究費の年度内で約220個のニュ-ロン対を記録し,テ-プに保存することに成功した.現在,自家製の分析用プログラムを使い,鋭意分析中であるので,定量的記述をするのはまだ出来ないが,定性的には種々の所見が得られたので,これについて記述する。一部は既に学会,国際学会で発表済みである。 (1)相互相関図を作製すると,短潜時で相手のニュ-ロンに興奮性の影響を及ぼしているものがある。(2)相手のニュ-ロンに抑制性の影響を及ぼしている場合がある。(3)これらの場合,興奮性一興奮性,興奮性一抑制性の組み合わせが多い。(4)共通入力を受けていると思われる場合がある。この共通入力の起源は不明だが,脳波の周波数範囲に入る,10H_2前後の周波数が相互相関図に見られることから,皮質下の脳波発生機構から共通入力を受けている可能性が多い。(5)又,長時間にわたって,相互相関図を作ってみると,或る時期には相関がみられるのに,別の時期には相関が見られなくなることがあり,ニュ-ロン対の相関度は常に変動している。(6)又,相互相関が無くなった時期においても,ニュ-ロン対の互々のニュ-ロンの自己相関図は似た周波数で活動している。従って,左右の大脳皮質ニュ-ロン活動の同期を調節するメカニズムがある事を窺がわせるが,その機構の解明は将来の研究にゆだねられている。
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