脊椎動物における神経突起伸長運動とその調節のメカニズムについて(1)高コントラストカメラと(2)パッチピペットによる細胞内潅流法を用いて、分子レベルで解明することを目的として本研究は遂行された。実験には成熟ラット脊髄後根神経節細胞の初代培養系を用いた。 初年度は高コントラストカメラを用いて脊椎動物培養神経細胞の成長円錐部フィロポディア内原形質流動運動の計測をおこなった。油浸100倍対物レンズを用いて倒立顕微鏡の分解能の限界まで成長円錐を拡大し、像の不鮮明な部分は高コントラストカメラにより改善することにより流動運動を計測することに成功した。その流動運動の多く(78%)は先端部から近位部に向かうものであり、その流動速度は分速5マイクロメター以下であった。(28℃)。 次年度はパッチピペットを用いた細胞内潅流法によって成長円錐部の細胞膜に存在するイオンチャネルの性質について調べた。セシウムイオンを細胞内潅流しナトリウムフリー、TEA溶液中でカルシウム電流を単離して調べ、この成長円錐部膜に高閾値カルシウムチャネルが存在することを証明した。次にこのカルシウムチャネルの薬理学的性質を調べ、ニフェディピン感受性L型とオメガコノトキシン感受性N型の2種類のカルシウムチャネルが存在していることを確かめた。次に、神経突起伸長運動におけるこれらのカルシウムチャネルの寄与を調べるため、それぞれのカルシウムチャネル阻害剤在存下で神経細胞を培養したところ、ニフェディピンは神経突起形成を阻害したがオメガコノトキシンは全く影響を与えなかった。細胞内カルシウム濃度の分布を調べたところフィロポディアの根元の部分にL型カルシウムチャネルが多く分布していた。以上からフィロポディア出芽とL型チャネルの関係が示唆された。フィロポディア内流動運動とカルシウム濃度の関係について現在調べている。
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