課題の研究を遂行する目的で、生物時計の分子機構の解明では、その先駆者である三菱化成生命科学研究所の井上らと同所で、共同研究を行った。明暗周期下、と眼球摘出ラットを用いてSCN(視交叉上核)中のVIP(vasoactive intestinal peptide)とそのmRNAの概日リズムを主として調べた。 1.VIPのリズム SCNをパンチ法で摘出し、酢酸抽出後EIA法で定量した。SCN中のVIPレベルは明暗周期下では、暗明の方が明期よりも高く、大脳皮質でも同様なパタ-ンがあった。この事はSS(somatostatin)の変動(SCNでは主観的昼にその夜よりも高、大脳皮質ではこれが逆転してVIPと同様なパタ-ンを示す)とは大きく異なった。 2.VIPmRNAリズム SCNを1.と同様に摘出し、フェノ-ル/クロロホルムで全RNAを抽出した。 RNAを電気泳動で分画後、ブロッティングしP^<32>でラベルした42ベ-スのオリゴプロ-ブを用いてハイブリダイズし画像解析によってVIPmRNAを定量した。明暗周期下と眼球摘出後2日目のラットについて全RNAの量をSCN、大脳皮質、SCN以外の前視床下部で調べると主観的夜に共通してその昼よりも多かった。 SSのmRNAは主観的昼のCT2ー6時に増加し、このピ-クはSS(ペプタイド)のそれより1ー2時間先行し自由継続した。一方、VIPmRNAはその主観的夜の方が昼よりも増加していた。このVIPmRNAを共通とするPHI(peptide histidine isoleucine)のプロ-ブでハイブリダイズすると2.1kbより小さいところにバンドが認められ、VIPのプロ-ブでハイブリダイズされるmRNAとは異なり興味あることと考えた。今後、SCN内での振動機構をペプタイドを中心にして解明すると共に、胎生期でのエントレ-ニングの様式を調べる予定である。
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