研究概要 |
ラットの脳脊髄液Na濃度(〔Na〕cst)の連続測定法を開発し,この方法によってラットに水を経口投与した際の〔Ns〕cstを連続測定した結果,投与直後より血中Na濃度(〔Na〕p)が低下し,それに伴い数分間の遅延でもって〔Na〕cstもゆっくり低下した。さらに興味ある点は,水の経口投与後の〔Na〕cstの低下速度が脱水ラットでは非脱水ラットに比べ60%程度高く,脱水ラットでは血液脳室間の水又はNaイオンの移動が亢進していることが明らかになった。さらに,血液脳室間の水及びNaイオンのダイナミクスを定量化する目的で,ラットの血液中に体重100g当り0.1,0.2,0.3mlのIMNacl溶液を10分間かけて持続注入し,注入時および注入後20分間にわたって〔Na〕p,〔Na〕cstを連続測定した。その結果〔Na〕cstは,〔Na〕pの変代に対しDose dependentに応答し,その変化量は注入終了20分後の〔Na〕pの変化量に比べ30〜40%程度であった。そこで〔Na〕pを入力,〔Na〕cstを出力として,血液脳室間,脳室脳実質間の水またはNaイオンの移動を連立常微分方程式で表わし,血液脳室間,脳室脳実質間の水の透過係数を求めた結果,それぞれ 0.024(Ml/(meq/Kδ・H_2Omin)),0.065(Ml/(meq/KδH_2O・min))であった。この係数を用いて急性に〔Na〕pが上昇した際の〔Na〕cstをシミュレ-トした結果,〔Na〕pがステップ状に上昇した際,同程度まで〔Na〕cstが上昇するためには少なくとも2〜3時間を要することが明らかになった。 以上の結果から脳室内のNa濃度は血中Na濃度の急性の変化に対し抵抗を示し,血液中の電解質の濃度変化に対し比較的安定していることが明らかになった。
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