本研究では、初代培養大脳皮質神経細胞を用い、これらの細胞において受容体アンタゴニストへの長期曝露により受容体の増加のみならず、GTP結合蛋白(G蛋白)の増加が生じることからG蛋白の生合成調節機構の解明を試み、以下の結果を得た。 1.ムスカリン受容体アンタゴニストへの長期曝露によって、ムスカリン受容体は増加し、この増加はkd値とBmax値の両者の増大に起因していることが明らかとなった。この時ムスカリン受容体刺激下のイノシト-ルリン脂質体謝は、非曝露群に比して低下していた。一方、[ ^3H]GppNHp結合およびGTPase活性は上昇しており、明らかにG蛋白の増加が生じていることが判明した。 2.本研究に用いた神経細胞はβーアドレナリン受容体(β受容体)およびこれと機能的に連関するG蛋白を介したアデニレ-トシクラ-ゼ(AC)活性系を有していることが明らかになった。しかもβ受容体およびこれと共軛するサイクリックAMP(cAMP)生成系は、細胞発育に伴って、ほぼ平行して機能の増加を生じることが認められた。またGsd蛋白mRNAの存在は、培養早期より認められた。 3.β受容体アンタゴニスト存在下で神経細胞を長期間培養した場合、β受容体は増加した。さらに、GTPの非加水分解性アナログ存在下におけるcAMP生成は、曝露群において有意に増加しており、またコレラ毒素によるADPーリボシル化の検討では、45kDa蛋白のADPーリボシル化が有意に増加していたことから、Gsd蛋白の機能亢進が生じていることは間違いないと考えられるが、Gas蛋白のmRNAには差が認められなかった。 以上の実験結果から、受容体アンタゴニストによる長期曝露は、G蛋白を増加させることが明らかとなったが、この生合成調節機序については、mRNAのより詳細な検討が必要と考えられ、現在検討中である。
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