Tリンパ球の表面膜受容体を介するイノシト-ル脂質代謝シグナル変換酵素の活性化機構

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02807029
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 佐々木 輝捷 札幌医科大学, 癌研究所, 教授 (00045494)
• 研究分担者: 佐々木 洋子 札幌医科大学癌研究所, 講師 (60045424)
• キーワード: T細胞受容体 / ホスホリパ-ゼC / 細胞内遊離Ca^<2+>濃度 / 可変領域 / 単クロ-ン抗体 / タンパク質チロシンキナ-ゼ

研究概要

1.ヒトT細胞株Jurkat細胞のT細胞受容体(TCR)/CD3複合体を単クロ-ン抗体で架橋すると、ホスホリパ-ゼC(PLC)の活性化と細胞内遊離Ca^<2+>濃度(〔Ca^<2+>〕i)の上昇応答が起こる。この上昇応答は、架橋後2ー3分間に見られる細胞内Ca^<2+>の動員相と、架橋後30分以上持続する細胞外からのCa^<2+>の流入による維持相とから成る。このCa^<2+>維持相に欠損のある細胞の亜系を見い出し、維持相の機序を検討している。 2.Jurkat細胞のTCRーβ鎖可変領域を持異的に認識するマウス単クロ-ン抗体KT38を調整した。KT38抗体は、〔^<35>S〕メチオニンで標識したJurkat細胞から分子量35Kの糖タンパク質を免疫沈降する。また、 ^<125>Iで表面標識したJurkat細胞から、KT38抗体は分子量90Kのヘテロニ量体を免疫沈降する。更に、β鎖の発現に欠損のあるJurkat細胞変異株には、KT38抗体と反応する抗原が見い出されない。紫外部吸光度モニタ-は、単クロ-ン抗体の精製に使用した。 3.TCR/CD3複合体を介するPLCの活性化に関与していると想定される非受容体型タンパク質チロシンキナ-ゼ(PTK)であるp59^<fyn>をコ-ドするcDNAを用い、大腸菌で59^<fyn>を発現するプラスミドを調製し、59^<fyn>タンパク質を得た。これを用いてウサギを免疫し、p59^<fyn>に特異的な抗体を調製した。また、fyn cDNAをJurkat細胞に導入・発現させ、p59^<fyn>を細胞内に過剰産生させ、Jurkat細胞の〔Ca^<2+>〕上昇応答、PLCの活性化、インタ-ロイキン-2(1Lー2)の産生および1Lー2受容体の発現に対する影響を検討している。 Jurkat細胞で発現されている非受容体型PTKの1つであるp56^<lck>をコ-ドするcDNAを用い、fynの場合と同様に、ウサギ抗体の調製と、Jurkat細胞での過剰発現による細胞応答を検討している。

研究成果

• [文献書誌] T.Takahashi: "Preparation of antiーT idiotype monoclonal antibody reacting with human T leukemic cell lines and with a small percentage of peripheral T lymphocytes" Clin.exp.Immunol.82. 590-595 (1990)
• [文献書誌] T.Sasaki: "Glycolipid transfer protein and intracellular traffic of glucosylceramide" Experientia. 46. 611-616 (1990)
• [文献書誌] H.HasegawaーSasaki: "Mechanism of phospholipase C activation through the T cell receptor 1 CD3 complex" Tumor Research. 25. (1991)
• [文献書誌] T.Endoh: "Difference in the Ca^<2+> response of rarious human T cell lines to stimulation of the T cell receptor 1 CD3 complex with monoclonal antibodies" Tumor Research. 25. (1991)
• [文献書誌] 佐々木 輝捷: "Tリンパ球の活性化とイノシト-ルリン脂質代謝" 蛋白質 核酸 酵素. 36. 235-239 (1991)
• [文献書誌] 佐々木 輝捷: "蛋白質チロシンキナ-ゼによるイノシト-ルリン脂質代謝 酵素の活性化" 代謝. (1991)
• [文献書誌] T.Sasaki(分担執筆),Edited byH.J.Hilderson: "Subcellular Biochemistry, Vol.16 Chapter 5 : Glycolipid transfer protein in Animal cells" Plenum Press(New York and London), 412 (1990)