研究概要 |
抗βー蛋白モノクロ-ナル抗体(MoAb)を用い,アミロイドβー蛋白前駆体の細胞内局在様式を免疫組織化学的手法およびimmunoblot法を併せて検討した。培養細胞としては,ヒト血管内皮細胞を用いた。特に老化性変化との関連から,老人血管の培養細胞やin vitroでの老人細胞も用いた。アミロイドβー蛋白前駆体を認識する抗βー蛋白MoAb(IRー9,ー12),切り出されたβー蛋白を認識するMoAb(IRー7),アミロイドを認識するMoAb(TB1,2,札幌医大,今井先生らより)を一次抗体として用いた免疫電顕的手法により検討したところ,ヒト血管内皮細胞は組織(臍帯,動脈,静脈)を問わず,また個体年齢(胎児,成人,老人)を問わず,さらにまたin vitroでの細胞老化(継代数)を問わず,光顕観察と同様に細胞表面と細胞質内の双方にβー蛋白前駆体が確認され,電顕的にも細胞質にβー蛋白前駆体が存在することが明らかとなった。これらの結果は,すでに検討したimmunoblot法による結果と併せ考えると,細胞膜性βー蛋白前駆体は105ー130kDであり,一方,細胞質性βー蛋白前駆体は30ー67kDと膜内在性βー蛋白前駆体に比べ低分子で,ミクロボディ様構造として存在していることを示している。一方,培養血管内皮細胞はプラスチックディッシュ上に基底膜を形成するが,7日間培養後の細胞の基底膜にもβー蛋白前駆体の免疫原性が認められるようになった。さらに培養を続け2週間後の細胞の基底膜成分をimmunblot法により検討したところ,βー蛋白前駆体はさらに低分子下し,分子量約20ー22kDの2バンドとして観察された。これらの観察は重要である。というのは,この事実は培養血管細胞が細胞膜あるいは細胞質性のβー蛋白前駆体を細胞外に排出し,それを間質として基底膜が補足するというin vivoのアミロイド形成過程を側面から再現しているからである。
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