本来バリアント内皮細胞とは3核以上の大型細胞を言うが、実験的に変性LDLやインタ-ロイキン4、ラジカルを培養液中に添加することにより多核のバリアント内皮細胞を作成することが可能である。またガンマインタ-フェロンや腫瘍壊死因子は細胞骨格の訪構築を起こし、類円形の内皮細胞が紡垂形に変化する。この変化は可逆性であるが、バリアント内皮形成には影響を及ぼさない。この形態変換に際して内皮細胞の透過性を始めとする諸機能も変化する事が考えられるが、これについては今後の研究に待ちたい。 若年者由来の大動脈内皮細胞は中年者、高年者の比べはるかにプロスタサイクリン産生量が多い。また免疫組織学的にプロスタサイクリンを染色して上記の結果を確認出来た。また内膜平滑筋細胞は微量のプロスタサイクリンを産生するが、中膜平滑筋細胞には産生能はない。 家兎に高脂肪食を投与して作製した動脈硬化病変を覆う内皮細胞は、次第に大型化し、またこれらの動脈から内皮細胞を培養することにより、2核や3核以上の核を有する内皮細胞が動脈硬化の発生初期から存在することが分った。 以上のことから、この研究の初期においてはバリアント内皮細胞に関与する因子として動脈硬化と加齢(老化)の両方が関与する事が考えられていたが、動物実験で極めて短期間に出現することから動脈硬化の役割が大きいことが明らかとなった。バリアント内皮細胞と炎症細胞の相互作用については現在研究の途中である。 本テ-マとは直接関係ないが、酵素抗体による免疫組織染色法を使って、常通のホルマリン固定・パラフィン包理切片上でエンドセリンの局在を観察することが可能となった。今後エンドセリンが動脈病変に及ぼす作用についても研究を進めて行きたい。
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