マラリア原虫におけるクロロキン耐性のカルシウム拮抗剤によるその耐性消失作用に関して一連の実験を行い、以下の内容の成績を得た。 1.クロロキン耐性Plasmodium chabaudi株/マウスの系においてCa^<2+>拮抗剤以外にカルモジュリン阻害剤(フェノチアジン系のトリフロペラジン、クロ-ルプロマジン、及び三環系のデシプラミン、イミプラミン)はそれぞれ単独では抗マラリア作用はないか、もしあっても極めて弱いが、クロロキンと併用することにより用量依存的にクロロキン耐性を消失させる。 2.クロロキン感受性原虫株に対しても、上記のカルモジュリン阻害剤はクロロキンに対する感受性を有意に増大させる。 3.ピリメサミン耐性原虫株には、Ca^<2+>拮抗剤(ベラパミル、ニカルジピンジルチアゼム)や上記のカルモジュリン阻害剤はその耐性消失作用はないか、またあってもその程度が弱い。従って、カルシウム調節薬剤による薬剤耐性の消失は薬剤に非特異的ではない。 4.クロロキン耐性原虫株とクロロキン感受性原虫株において、クロロキン投与後の原虫の微細構造の変化を電子顕微鏡的に調べたところ、クロロキン感受性株では初期変化としてFood vacuoleのクランピング、後期変化として小胞体の消失、リボゾ-ムの凝集、核内小粒の出現などを認めた。しかし、クロロキン耐性株ではクロロキン投与後もそのような変化は認めなかった。 5.高速液体クロマトグラフィ-により、P.chabaudi寄生赤血球におけるクロロキンの蓄積を定量化することができた。さらにクロロキン感受性株では耐性株よりもクロロキンの蓄積が多いことが明らかになった。
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