実験計画書に記載の要領で、ジフテリア毒素A断片(DA)を酵母(saccharomyces cerevisae)で誘導的に発現させる系を確立し、毒素耐性突然変異体酵母を分離することに成功した。現在、この突然変異体の相補性群への分類と各相補性群に属する変異体の生化学的解析を進めている。このように所期の実験計画をほぼ達成することが出来たので、今後の展開が大いに期待できる。本研究の詳細は1991年度の細胞生物学会等で発表するとともに、速やかに学術誌に発表する予定である。 以下に研究成果の概要を簡単に述べる。 1.酵母におけるDTAの誘導的発現系の確立 DTA遺伝子断片を酵母GAL1プロモ-タの下流に挿入し、DTA発現ベクタ-YCp103/DTAを作成した。このプラスミドを導入した酵母SP1株は、グルコ-ス培地では全く正常に増殖するが、ガラクト-ス培地ではコロニ-形成が出来なかった。この結果は、予想した通り、ガラクト-スによってDTAが誘導的に発現したために、酵母宿主のタンパク質合成が阻止されたためであった。 2.酵母のDTA耐性変異体の分離 上記の誘導系を用いて、ガラクト-ス培地でコロニ-形成できる酵母変異体を分離した。変異源処理なしでも小数のコロニ-が得られたが、あらかじめ酵母をUV照射することにより、50ー100倍多いコロニ-が得られた。総計50クロ-ンを解析したところ、およそ半数が酵母染色体上の突然変異に起因することが判明した。今後早急に毒素耐性変異の相補性群を確立し、耐性原因遺伝子のクロ-ニングへと進む予定である。
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