研究概要 |
単純ヘルペスウイルス2型(HSV2)および水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)感染細胞中に産生されるチミジンキナ-ゼ(TK)におよぼすインタ-フェロン(IFN)の影響をみるために次のような実験を行ない、下記のような結果を得た。ヒト胎児線維芽細胞(HEF)の培養細胞を4〜16単位のヒトIFNーβで24時間処理したのちに、非処理HEFと共にHSV2ーG株またはVZVーCaQu株を感染させた。感染後72時間後に感染細胞よりウイルスTKを取り、森らの方法により精製した。HSVーTKについてはアシクロビル(ACV)の、VZVーTKについてはブロバビル(BVーaraU)の燐酸化効率を各々の物質の1燐酸化化合物の生成速度より算出した。すなわち基質としてのACVまたはBVーaraUの濃度の逆数を横軸に、1燐酸化物の生成速度の逆数を縦軸にプロットしたLineweabenーBurkの図より、各々のTKの基質に対するkmを求めた。その結果4〜16単位/mlのIFN処理をした後にウイルス感染をうけたHEFより得たウイルスTKは、IFNの処理をうけずにウイルス感染をしたHEFのウイルスTKに比べて、ACVまたはBVーaraUに対するkm値が低くなった。すなわちIFN処理に伴ない、産生されるウイルスTKのACVまたはBVーaraUへの親和性が高まることが証明された。HSVやVZVの感染に対して、ACVまたはBVaraUとIFNとが相乗的な抑制効果を示すということは、ACVやBVaraUが、ウイルスTKの作用をうけて燐酸化されたのちに抗ヘルペス作用を示すという作用機序を考えるならば、IFNの処理にもかかわらず、ウイルス由来のTKは産生されて作用していることを示している。今回の我々の研究の結果は、細胞のIFN処理に伴ない細胞内に産生されたヘルペスウイルスTKのACV,BVーaraUなどのヌクレオシドアナログに対する燐酸化効率が高まることを証明し、ACVとIFNとの相乗作用の機序を解明した。
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