研究概要 |
胸腺の退縮した老齢のヒトやマウス、あるいは、先天的に胸腺の無いヌ-ドマウスでも、末梢には特有のTリンパ球が存在することから、胸腺外Tリンパ球分化経路の存在が示唆されていた。筆者らは,この胸腺外Tリンパ球が、肝類洞で集中的に起こっていることを明らかにできた。肝類洞に存在するこれらのT細胞は、芽球状の形態を示し、in vitroで自発増殖能を持つことからも、他の末梢免疫臓器にあるリンパ球とは性状が異なり、分化、増殖の一つの部位として肝を考える由縁である。 蛍光抗体で肝のαβT細胞を染色すると、胸腺と同様に、TcR intensityがdullのものとbrightのものからなる二相性を示すことが明らかになった。他の、末梢血、脾臓、リンパ節などのαβT細胞はbrightのみの一相性を示す。ここで興味深いのは、肝類洞のdull αβTcRは、胸腺のdull TcRとbright TcRの中間のintensityを示し、“intermediate"というべきものであった。一方、肝のbright TcRは他の臓器のbright TcRとintensityが一致している。胸腺摘出したマウスでは、肝のbright TcR細胞や、他の末梢のbright TcR細胞が漸時減少してゆくことから、intermediate TcR細胞のみが、胸腺外分化T細胞と結論できる。ヌ-ドマウスでは、肝でも末梢でも、intermediate TcR細胞のみからなっている。 γδT細胞も、肝では特有のものがある。PCR法で、使用されているV gene segmentを検索したところ、肝ではVγl or 2/Vδ6が好んで使用されていて、これまで知られてきた胸腺内分化して末梢に移行したものとは異なる。 以上のことから、特有のαβおよびγδTリンパ球が肝類洞で胸腺外分化、増殖していることが明らかになった。
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