研究概要 |
本邦の慢性肝障害の半数以上は非A非B型肝炎ウィルスによると言われてきた。近年M,HonghtonらによりC型肝炎ウィルスの発見が報告され、その遺伝子構造が明らかにされた。又C型肝炎ウィルスに対する抗体アッセイ系も確立された。C型肝炎患者の血中に存在するウイルス量は極めて微量と考えられ、これまでC型肝炎ウィルス抗原或いはウィルス核酸の検索法は確立されていなかった。我々は遺伝子を試験管内で指数関数的に増幅するPCR(ポルメラ-ゼ・チェイン・リアクション)法を用いてC型肝炎ウィルスRNAの高感度検出法を確立した。即ち患者検体(肝組織及び血清)から全RNAを抽出し、既報のC型肝炎ウィルスRNAの塩基配列に基づき、Flaviウィルス属に共通の遺伝子構造を検索し、これらの情報に基づいて作製した約20塩基の合成DNAを用いて逆転写酵素によりcDNAを作製した。このcDNAを用いて、更に同様に作製した合成DNAを用いてPCR反応を行ないウィルスRNAの存在の有無を検出しうる事を確認した。我々は本法を用いてウイルス肝炎の診断、治療効果判定を行なった。まず非A非B型肝炎患者の血中ウイルスに関して、非A非B肝炎患者90例中83例(92%)と高率にウィルスが存在することを明らかにした。又肝組織中におけるウィルスに関しても40例中36例と同様に高率に存在する事を明らかにした。またインタ-フェロンによるC型急性肝炎ウィルスRNAが持続的に消失する事、無効例においてはウィルスRNAの消失が認められない事を明確にした。即ちC型肝炎の治療効果判定に本法が有用である事を明らかにしえたものと考える。本法の開発はC型肝炎の診断・治療、病態の解明上、重要な意義を有するものと考えられる。
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