研究概要 |
細胞培養実験にて2%,5%酸素濃度条件下に比して大気中の酸素濃度(20%)条件下にてILー2による高いLAK活性がえられたことより,大気中の酵素濃度に近い動脈血酸素分圧にするためマウスを50%酸素濃度下にて飼育し,ILー2によるLAK細胞活性とLAK養子免疫療法による肝癌増殖抑制作用を検討した。20%酸素濃度下(大気中)あるいは50%酸素濃度下にて飼育したC ^3H/Heマウスに3日間連日ILー2(10^4U)を投与し,さらに3日後に脾細胞のLAK活性を ^<51>Cr release assay法にて測定した。50%酸素濃度下にて飼育したマウス群では20%酸素濃度下マウス群に比してE:T比10:1以上で有意に高いLAK活性が誘導しえた。次にC ^3H/Heマウスの腹腔内にMH134肝癌細胞(10^6個)を投与し,10日目よりLAK細胞とILー2とを腹腔内に各週3〜4回投与した。その結果,20%酸素濃度下で飼育した担癌マウスに比して,50%酸素濃度下で養子免疫療法を施行した担癌マウスの生存率は有意に延長した。しかし,このマウス実験での酸素濃度によるLAK活性の差はヒト末梢リンパ球培養での酸素濃度の違いによるLAK活性への影響ほどではなかったことより,in vivoにおいてはLAK細胞の活性を制抑する他の多様な因子も存在するものと考えられる。また,この実験は肝癌細胞移植10日目にLAK療法を行っているが,10日目より以前にLAK療法を施行すると50%酸素濃度下では肝癌細胞による腹水が消失し,治中したマウスがみられることより,肝癌細胞が少数の時にはLAK細胞は癌細胞を完全に破壊しえるが,肝癌細胞が多数になると十分に破壊しえなくなる。それゆえ巨大化した癌は多科的切除を行い,残りの少数癌に対してLAK療法が期待できることを示唆している。
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