12例の自己免疫性肝炎についてHLAの表現型について検討し、健常日本人に於ける表現型の出現頻度と比較検討した。その結果、HLAクラス工抗原ではB35及びB54が、又クラスII抗原ではDR4及びDR4の連鎖抗原であるDRw53が自己免疫性肝炎で有意に高頻度に認められた。実にハプロタイプの解析ではB35ーDR4、B54ーDR4、B35ーDQw3、B35ーDR4ーDQw3が有意に高頻度であった。しかし、以前より疾患感受性とされていたA26については、今回の検討で有意差がみられなかった。なお、これらの抗原の中では、DR4が全例にみられ、DR4が本疾患の感受性を最も強く規定しているものと思われた。DR4は単一な表現型ではなく、リンパ球混合培養により数種のサブタイプに分類されている。現在では、それらサブタイプの塩基配列も判明しているので、DR4の自己免疫性肝炎患者に於けるサブタイプについて、分子生物学的手法を用いて解析した。すなわち末梢血単核球より得たDNAから、DRB鎖をコ-ドするDNAの第2エクリンをPCRで増幅し、DR4サブタイブ特異的オリゴヌクレオタイドとのSpot Hybridizationを行い(SSO法)DR4のサブタイプを同定した。その結果、KT2とDw10以外のDR4サブタイプが自己免疫性肝炎にみられた。そこで、日本の自己免疫性肝炎とコ-カシアンの症例でみられるDR3とに共通するアミノ酸の配列について検討した給果、第3高変異部位であるアミノ酸番号70ー73に、疾患群に特異的な荷電を有するアミノ酸の配列が認められた。この配列で関筋リウマチで疾患感受性とされるアミノ酸配列に酷似していたが、第74番めのアミノ酸の荷電はリウマチでは一定しているものの、自己免疫性肝炎では一定の傾向を認めなかった。以上の結界は、自己免疫性肝炎に感受性を有する人類共通のDRB鎖の構造を示したものと思われる。
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