研究概要 |
本年度は慢性リンパ瘻羊で抗羊アルブミン抗体注入により引き起こされる肺高血圧症と肺障害を示し、抗体が肺毛細血管内に存在することを明らかにした.〈慢性覚醒リンパ瘻羊の作成〉4頭の羊(32±5kg,雄)をもちいStaub等の方法により作成した.〈抗羊アルブミン抗体の作成〉兎の精製アルブミン2mgをアジュバントとともに兎に皮下注し、この処置を毎週行ない6週目に兎より採血し、得られた血清を56℃30分で補体を不活化したものを用いた.〈実験方法〉1時間以上の安定した肺循環諸量、肺リンパ流量を測定後、抗体(3cc)を動脈内投与し、その時の肺循環動態、肺リンパ動態を測定した.また、組織学的に抗体の存在部位を観察した.〈結果〉抗体投与により、平均肺動脈圧は14.6±1.1(SD)Torrから1時間後に27.3±1.7Torrと約2倍に上昇したが、投与3時間後にはベ-スライン値にもどった。肺リンパは1.0±0.4ml/15minから1時間後6.4±2.3ml/15minへと増加し、その後漸減し始めたが、4時間後にも4.1±2.1ml/15minとベ-スライン値に比べ増加したままであった。蛋白濃度比(リンパ/血漿)は、抗体投与前後で有意差を認めなかった.抗体注入30分後に肺を摘出、組織学的に抗アルブミン抗体(兎1gG)の肺内分布を観察した.蛍光抗体法で兎1gGは肺胞壁内に存在し、ABC法で抗体は肺毛細血管内に存在していた.〈考案〉抗アルブミン抗体注入は羊に肺動脈圧上昇と肺障害を引き起こし、かつ、抗アルブミン抗体ーアルブミンの免疫複合体は肺毛細血管内に存在すると考えられ、肺毛細血管内にマクロファ-ジは他の臓器に存在するマクロファ-ジ同様、抗体と結合した抗原の処理を担っている考えられた.
|