昨年度は慢性リンパ瘻羊を用い、抗羊アルブミン抗体注入により肺高血圧症と血管透過性亢進型肺障害が引き起こされることを示した。また、抗体が肺血管内マクロファ-ジの表面に存在することを明らかにした.本年度は抗体投与による一過性肺高血圧症がインドメサシン前投与により完全に抑制されること、また、好中球エラスタ-ゼ阻害剤前投与による血管透過性亢進型肺障害への影響を検討した.(慢性リンパ瘻羊の作成)5頭の羊(38±8kg)をStaub等の方法により作成した.(抗羊アルブミン抗体の作成)羊のアルブミンをアジュバンとともに兎の皮下に毎週1回投与し、6週目に採血し、得られた血清を56℃30分で補体を不活性化し、 80℃で保管し、実験当日使用した.(実験方法)1)3頭の羊を用いインドメサシン5mg/kgを前投与(iv)し、その前後で抗体投与による肺動脈圧上昇の程度を比較した.2)2頭の羊を用い、エラスタ-ゼ阻害剤前投与により、抗体投与による肺循環、肺リンパ動態の変化を検討した.(結果)1)抗体投与による肺動脈圧上昇は18±7mmHgであったが、インドメサシン前投与にて、肺動脈圧上昇はほぼ完全に抑制された.2)エラスタ-ゼ阻害剤(ONOーEIー546、3mg/kg)前投与により肺動脈圧上昇、肺リンパ量上昇、肺リンパ蛋白クリアランスは変化しなかった.(結論)抗アルブミン抗体投与による一過性の肺動脈圧上昇はおそらく肺血管内マクロファ-ジより放出されるアラキドン酸代謝産物の放出によるが、肺動脈圧上昇と血管透過性亢進型肺障害に好中球エラスタ-ゼの関与は少ないと考えられる.
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