本研究では慢性リンパ瘻羊に抗アルブミン抗体を投与することにより、一過性の肺高血圧症と、血管透過性亢進型肺障害が引き起こされることを示し、その機序を解明しようとした.(対象)慢性リンパ瘻羊9頭(37±8kg、雄)をStub等の方法により作成した(実験1)あらかじめ兎で作成した羊抗アルブミン抗体(0.5cc)動脈内投与し、肺循環動態を測定し、インドメサシン前投与による影響を調べた.また、蛍光顕微鏡にて肺組織内布分を調べた.2)抗体を3cc動脈内投与し、その時の肺循環動態、肺リンパ動態を調べるとともに、好中球エラスタ-ゼ阻害剤(ONOーEIー546、3mg/kg)を前投与し、好中球エラスタ-ぜの関与を検討した.(結果)抗体投与による肺動脈圧上昇はインドメサシン投与で完全に抑制され、抗体は肺血管内マクロファ-ジの表面に分布していた.また、末梢白血球数は著明に低下したが、血小板数は変化しなかった.2)抗体投与により肺動脈圧は14.6Torrから27.3Torrへと約2倍に上昇したが、3時間後にはベ-スラインに戻った.肺リンパは1.0±0.4ml/15minから1時間後に6.4±2.3ml/15minへと増加し、4時間後に橋4.1±2.1ml/15minと増加したままであった.蛋白濃度比(リンパ血漿)は抗体投与前後で差をみとめなかった.エラスタ-ゼ阻害剤前投与ではこれら反応を抑制できなかった.(結論)抗羊アルブミン抗体投与により肺高血圧症を伴う血管透過性亢進型肺障害が引き起こされ、その時の反応に肺血管内マクロファ-ジが関与していることを明らかにした.また、肺動脈圧上昇反応はアラキドン酸代謝産物の放出によることを示した.白血球数が減少することから、好中球エラスタ-ぜの関与を推定したが、明らかではなかった.
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