生後3日、7日、14日および28日目のラット(各4ひき)を心臓より4%パラフォルムアルデヒド-リン酸緩衝液(0.1M)にて潅流固定をし、摘出した小脳をマイクロスライサ-にて薄切し抗aFGFにて免疫染色(ABC法)した。生後3日目の小脳では、外顆粒細胞の胞体が最も強く免疫染色された。この時期では内顆粒細胞の数は少ないが、強く免疫染色される内顆粒細胞も散見された。分子局は淡く染色された。生後7日目の小脳では、免疫染色はプルキンエ細胞の周囲で最も強く認められた。これらは線維状を呈し、プルキンエ細胞を取り囲むように配列していた。この時期では内顆粒細胞も数を増し、内・外顆粒細胞とも胞体が淡く染っていた。生後14日目になると、分子層の下層半分(プルキンエ細胞層側)がびまん性に強く免疫染色されていたが、分子層上半分(多顆粒層側)はほとんど免疫染色されなかった。内・外顆粒細胞の胞体の染色性も極めて弱くなった。生後28日目では、外顆粒層は消失し小脳は成熟した層構造を呈するようになった。抗aFGF免疫染色では、内顆粒細胞の胞体の染色性はほとんど明らかではなくなったが、分子層がびまん性に強く免疫染色されるようになった。プルキンエ細胞の胞体や樹伏突起基部は免疫染色されなかった。 以上より、生後発生期の小脳において、aFGFは顆粒細胞の胞体から、その軸索突起である分子層の平行線維に移動してゆくものと考えられた。平行線維は小脳における最も重要なシナプス形成の場であるので、aFGFは小脳の機能維持に不可欠と思われた。今後、電顕レベルでaFGFの細胞内局在とその生後発生における変化を明らかにしてゆく予定である。
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