今年度は脳アミロイドアンギオパチー(CAA)の成因を明らかにする目的でトランスサイレチン型、β蛋白型、シスタチンC型CAAのアミロイド沈着病変の比較検討を行い、また臨床症状との対比も行った。三病型のCAAはアミロイド蛋白の化学的性状が異なるにもかかわらず、髄膜血管に共通したアミロイド沈着病変を認めた。すなわち中小の血管では壁全層に、大型の血管では中膜を中心にアミロイド沈着が見られた。一方、皮質血管へのアミロイド沈着は三疾患で大きな差異が見られた。すなわちトランスサイレチン型CAAでは皮質表層の血管に軽度のアミロイド沈着が観察されたのみであったが、β蛋白型CAAでは皮質表層から比較的深層の血管に到るまで種々な程度のアミロイド沈着が見られた。さらにシスタチンC型CAAでは皮質全層のほとんどすべての血管壁に高度なアミロイド沈着が観察された。 臨床像との対比ではトランスサイレチン型ではCAAによる脳出血は見られず、またβ蛋白型でもCAAによる出血病変の頻度は低い。これに対しシスタチンC型CAAでは高率に脳出血が発生することが知られている。従ってCAAによる脳出血の発生には髄膜血管よりも皮質血管のアミロイド沈着病変の程度がより重要な要因であることが考えられる。またトランスサイレチン型CAAでは血中にアミロイド前駆蛋白が存在するが、本疾患とβ蛋白型・シスタチンC型CAAとの間には髄膜血管の病変を中心に多くの形態学的類似性があることより、後二者のアミロイド蛋白も流血中由来であることが推測された。
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