研究概要 |
進行性筋ジストロフィ-症とくにDuchenne型(以下DMD)は悲惨な遺伝子疾患であるが、その病態解明のKeyを握るDMD遺伝子の全貌が解明され、本研究ではその遺伝子産物dystroplinの分子構造の解明とその存在様式の解析からその機能を推定することを目的としている。本年度は正常ヒト骨格筋にて、平成3年度はDMD生検筋にてdeep etching replica法を用いて上記dystrophinおよびその存在部位を観察する。本研究は申請時には生の筋検体を液体ヘリウムで急速凍結しその後の過程へ移ることにしていたが、我々の本年度の研究にてヒト骨格筋を生検時4%パラフォルムアルデヒド溶液で2時間固定した後、液体ヘリウムで急速凍結した方が人工産物が少ないことが判明したので,本年度はこの方法に従って研究した。正常対照骨格筋6例について急速凍結以後の方法は申請時研究計画書に記した方法によりreplica膜を作製した。replica膜の低倍電顕観察では筋原線維が整然と配列している人工産物の少ない筋線維はreplica膜の限られた場所にしか存在しなかった。現在までの光顕電顕免疫学的研究ではdystrophinは筋細胞膜内側に存在することが判明しているので、高倍のreplica膜電顕像では筋細胞膜周辺構造を中心に観察した。その結果この部位の出現様式に2種類あることが判明した。1つは割面が筋細胞外腔から基底膜を通り筋細胞膜真表面,筋細胞膜P面,筋細胞膜関連細胞骨格から筋細胞内部へと走るもので、他の1つは筋細胞内部よりdystrophinが存在する筋細胞膜関連細胞骨格のみられる部位を通り筋細胞膜真内表面,筋細胞膜E面から基底膜を通り筋細胞外腔へと割面が抜けるものである。本年度の研究で正常ヒト骨格筋細胞の細胞膜裏打ちとしての細胞骨格は種々の形態のものがあることが判明したので、平成3年度に予定しているDMD骨格筋細胞における筋細胞膜裏打ち細胞骨格成分と比較検討しdystrophinの同定を行なってゆきたい。
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